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「ちょっと飲み過ぎてしまった。風呂に入って寝るわ」
僕は手早くシャワーだけを浴びると、由美が用意してくれたパジャマに着替え、一階の奥にある寝室に入るとさっさとベッドに潜り込んだ。
悪酔いしていたのは事実だった。
あまり酒に強くない上に余計なことを聞いてしまったせいか、目を閉じると脳ミソがぐるぐる回るようだ。
妻はキッチンでまだ家事をこなしている気配。
『真面目で働き者の奥様』。
30人ほどいる従業員にも妻の評判は上々だ。
『由美ちゃんは苦労を知っているから人間が出来ている』
うちで40年働く工場長の菅原さんはそう言っていつも妻のことを褒める。
僕は枕に後頭部を押し付けたまま、由美との出会いを思い出していた。

由美は得意先のひとつで事務の仕事をしていた。
容姿は控えめで何事にも目立たないタイプではあったが、派手なもの全般が苦手な僕には、なぜか由美の事務職の制服姿にそそるものを感じさせた。
顔を合わせれば二言三言交わすようになったものの、25歳にもなって女に免疫が出来ていなかった僕は、由美の制服を盛り上げる形の良い胸元に目をやって一人密かに顔を赤らめたりしていた。
由美は僕より四つ年下だった。
3ヶ月ほど経って初めてお茶に誘うことが出来た。
由美の帰りぎわを狙って訪問し、いかにもついでにと言う風に食事に誘ったのだが、所用があるのでお茶だけならと言われ、近くのコーヒーショップに入ることになった。
そしてそこで由美から、その月一杯で今の会社を辞めることを聞かされた。
「私は派遣ですから契約期間が終わったのです」
「…谷田部さんは真面目で仕事が出来る人だから、次の仕事もすぐに見つかるでしょ?」
僕は少なからず受けたショックを隠しながらそう言ったが、由美は、
「父が入院していて看病があるし、時間の制約もあるのでなかなか難しいですね」
と、寂しげな笑顔を浮かべた。
「病気って…重いの?」
由美のあいまいな笑顔を見て、いきなり不躾な質問をしたことを恥じたが、少し間を置いて、
「うちは母もいないので、私が面倒を見るしかないのです」
と答えられ、僕は咄嗟に、
「じゃあうちで働けばいいじゃない。悪いようにはしないから」
と息急き切って告げていた。
「うちもパソコンを使える事務の人を探していたんだ。最初はパートタイマーとして入ればいい。それに…病院はどこ?」
「…能率大の附属病院ですけど」
「それならうちの会社からも近い!ね、そうしなよ」
僕のどこにそんな積極性があったのかいまだに謎だ。事務職を募集しているというのも咄嗟のでまかせ。そして戸惑う由美を押しまくって、ついに転職を同意させたのだった。
数日後には由美を会社に同行し、『この人に働いてもらうから』と社長である父と専務の母に告げた。
当時の僕は、大学卒業後2年間のメーカー勤務のあと、父が経営する部品製造会社に入社して2年目。肩書きこそ営業課長だったが、まだまだ見習いの身だった。
人事全般を見ていた母は『勝手なことを…』とぶつぶつ言ったが、父はなにやら感じるものがあったのか何も言わなかった。
(つづく)
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2010.04.22 Thu l 背徳エッチへのお誘い l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

主人公君は
ちゃっかり職権濫用してまんなぁ(笑)。
でも、真面目な由美さんがどうかわるのかに期待してます!。

次回 背徳エッチへのお誘い 第6話 人には知られたくない過去がある!。
2010.04.22 Thu l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
たしかに西崎の本意では無いにしろ、立場的な優位性を利用して由美をモノにしようとしてますなあ^^;
由美は真面目なだけに、そんな西崎の気持ちをわかっていつつ、やはり転職しました。
さて二人はどうやって結ばれるのでしょうか?
2010.04.23 Fri l スマイルジャック. URL l 編集

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