FC2ブログ
ウイルは、先に書いた里美ちゃんの処女を奪った日本人大好きバカ男で、私とはいろいろと確執があったのだけど、この時は、私にとって割りと好意的な仲介をしてくれたと思う。
「そんな難しい問題を、僕らに聞かされても決着は付かないよ。放課後にでも、二人仲良く心行くまで討論すればいいんじゃね?」
イ・アジュンはウイルを睨み付け、私は軽く肩をすくめた。
「それに、僕は何人もの日本人を知っているけと、羊みたいにおとなしい彼らが、とてもそんな大それたことが出来るとは思えないんだよね」
クラスに失笑が湧き、二人いる日本人の男子も迎合するように笑った。
「OK、みんながこの話題に辟易しているのはわかったわ。放課後にリさんと討論する時間ももったいないし、興味のある人は、自分で調べて欲しいわね」
すでに知識が尽き果てていた私は、内心ホッとして仲介を受け入れたが、イ・アジュンは興奮冷めやらず、いきなり、『日本の兵隊に逆さ吊りにされた韓国人慰安婦が、生きたまま腹を裂かれて殺されたのよ!』と、叫び、クラスに小さな悲鳴が起きたけど、教師が『この討論はここまで』と、締めくくってしまった。
あまりにも荒唐無稽な話を持ち出したイ・アジュンは墓穴を掘ってしまったようだ。
授業の後、ウイルがニヤニヤしながら近付いてきた。
「ナオはやっぱりタダ者じゃないね。日本の男は腑抜けが多いけど、女はなかなかなもんだ。去年は、泣きながら韓国人に謝った日本人がいたけど」
「日本の高校生は圧倒的に近代の歴史の知識が乏しいのよ。男の子がどうとか言うより、教育の問題ね」
「なるほど…で、どう?今夜、僕と付き合わない?」
「アホと付き合う時間は無い」
「…アホって言うな!」

その後も、イ・アジュンは執拗に私に絡んで来たけれど、私は取り合わなかった。私たちの主張の糸を、たとえ銀河系まで伸ばしたとしても永遠に交わりはしない。それが日本人と韓国人の宿命だと思うようになったのは、その時からだった。
だから、ヨン・ドンギュンにも、初めはいい印象を持てなかったのだ。
まあ、そんな警戒感はあったけれど、さしあたり会話する相手もいなかったので、しばらく話しを続けることにした。とりあえず、日本語で話せるしね。
「僕の名前はヨン・ドンギュンです」
「ヨン?ヨン様?」
「アハハ、日本人は、すぐそう呼ぶけど、ペ・ヨンジュのヨンは名前、僕のヨンは名字。だからドンって呼んでくれた方が嬉しいですね。漢字だと廉東均と書きます」
ドンはそう言って携帯のメモ欄を開き、名前を書いて見せた。
「なるほどドンね。ドン・ファンのドン。ドン・ビトー・コルレオーネのドン。覚えやすいわ。私はナオ。木ノ内奈緒です」
「ナオちゃん。可愛い名前ですね。ナオちゃんもあまりこういう場所には慣れてない?」
「ナオでいいよ。今日は友達にしつこく誘われてきてみたけど、思った通り、つまんないとこだわ」
「おお!ストレートですね。僕もなんだか落ち着きません。ここはガイジンの中でも、お金持ちばかりが集まるお店のようです」
「そうなんだ。だけどドン、敬語は止めてよ。私よりずっと年上でしょ?私は高3だけど」
「あ、はい。僕は22歳です。でも、敬語しか教わってないので。ゴメンナサイ」

しばらくドンと話すうちに、すっかりリラックスしてしまった。
そして、ドンの父親が東京駐在の外交官なので、彼自身は大学のある大阪と東京を行ったり来たりしていることを知った。
こいつこそ、お金持ちの坊っちゃんだと思うけど、他のガイジンのように、傲慢だったり粗暴なところが無いので、けっこうリラックスして会話をすることが出来た。
しばらくして、里美ちゃんが呼びにきた。
「奈緒ちゃん、みんなでVIPルームに行こうって」
ちょっとうんざりって感じだったけど、せっかくお招きいただいたんだし、ここはお付き合いっていうものだろう。仕方ないわね。
(つづく)

にほんブログ村 にほんブログ村へ
スポンサーサイト
[PR]

2011.08.08 Mon l 奈緒の冒険・なにわアクション編 l コメント (2) l top

コメント

なんだか(^^;)
奈緒ちゃんはアグレッシブな女子アナやニュースキャスターになりそうな感じですねぇ?

それにしてもドン君の本名は廉東均っていうんですねぇ?。

なんだか学者にもそんな奴いたような(笑)。
2011.08.08 Mon l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
そう言えば昔、『奈緒の冒険・OL編』や、『代議士編』を書いて!ってコメントがありましたなあ^^
『廉東均』は、昔いたボクサーの名前なんです。
2011.08.08 Mon l スマイルジャック. URL l 編集

コメントの投稿