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「ドンも一緒にいいでしょ?」
里美ちゃんに聞くと、ハンサムなドンの風貌に、一瞬オヤッ?って顔をした後、
「あんたも来る?」
と、ぞんざいに言った。
たぶんアジア系だというだけで、里美ちゃんのストライクゾーンからは外れてしまうのだろう。
「あっ、僕はいいです」
と、辞退するドンに、私が、
「いいから、おいで」
と、アゴをしゃくって見せたので、ドンはちょっと驚いた表情だったけど、結局ついて来たのだった。

VIPルームとかいう部屋は、狭い空間に革張りソファと小型のガラステーブルがいくつか置かれていて、なにやら狭苦しい。むしろ一般スペースの方が快適じゃないかと思うくらいだ。
座る場所を里美ちゃんに指示され、ドンとは離されてしまった。
店内より、さらに照明が落とされた室内には、7、8人の男女がいて、私の横には、大柄な白人の男の子が座って、訛りのある英語で、しきりに話し掛けて来る。
さっき里美ちゃんに紹介された、たしか…ディックだっけ?変なヒゲを生やしているけど、たぶん私と同じくらいの年齢のはずだ。いかにも軽薄なタイプで、うんざりした私が首を伸ばすと、里美ちゃんが、にっこり笑って聖母のような表情でうなづいた。
(おいおい、バカ里美は、この熊みたいな男を私とくっつけようとしてるの?まったく冗談じゃないわよ)
ディックが肩に手を回してくるのを邪険に振り払った頃から、ルーム内の雰囲気が険悪になったような気がする。白人男をぞんざいに扱うことは、どうやら失礼なことになってしまうらしい。まあ、あからさまに嫌悪感を表に出していたからね。
「奈緒ちゃん!もっとリラックスしてよ。なんかお酒でも飲めば?」
里美ちゃんが、場を繕おうとしたら、ひとりのアメリカ男が、
「このレディに、クジラのステーキを」
と思わせぶりに言ったので、周囲から明らかな嘲笑が沸き起こった。
(やれやれ)
どうやらここでは、オーストラリアでも経験した白豪主義が幅を利かせているみたいだ。
「国の食文化について、外国人からとやかく言われたくはないわね」
私としたら、出来るだけ穏やかに言ったつもりだったけど、すぐにアメリカ人が食い付いてきて、
「軍国主義を叩きつぶし、日本に民主主義を教えてたやったのはアメリカ」
とか、言い出した。おお!懐かしきジョージ・ブッシュⅡ世の迷言。私がディックを袖にしたのが、彼らの自尊心を傷付けたのかもしれない。
かなり険悪な雰囲気になってしまったけど、どうやら私に味方はいない。
里美ちゃんが『奈緒ちゃん…』と、袖を引っ張るけど、こいつは戦力外。
「あら、日本が戦ったからこそ、アジア諸国が欧米から独立出来たって言う人もいるわ」
私の言葉に、すかさず反論して来たのはオーストラリア人の女の子。
「なにバカなこと言ってるの?世界中に迷惑をかけたくせに」
「…知ってる?連合軍の日本占領中、一番タチが悪くてレイプ事件を多発させたのはオーストラリア兵だったってこと」
オーストラリアでのイ・アジュンとの論戦以来、こう見えても、けっこういろいろ調べているのだ。
色めき立つオージーガールを制したのは、リーダー格って感じのアメリカ人だった。
「まあまあ。ところで君はどう思うんだい?戦争中の日本の行いについては」
と、隅で静かに聞いていたヨン・ドンギュンに話を振った。
内心、面倒なことになったと思った。反日的で被害者意識の強い韓国人に参戦されたらやっかいだ。
もちろん反論は出来るけど、アジア人同士の論争を、回りで白人どもがニヤニヤ眺めている図というのも、イ・アジュンとの論争の時と同じ状況で、かなりムカつく。
ところが、ドンの答えは意外なものだった。
(つづく)

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2011.08.09 Tue l 奈緒の冒険・なにわアクション編 l コメント (2) l top

コメント

良く書けてますね
言っちゃなんだけどオーストラリア人はバリバリの差別主義者の集まりだよ、マジで。

アメリカ人なんかが甘く見えるくらいだから。

まぁ、ドン君がどんな風にかかれるか楽しみ(^^)。
2011.08.09 Tue l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
いわゆる白豪主義ですからね。
日本人は、そこら辺をよく見極めないとね。
2011.08.11 Thu l スマイルジャック. URL l 編集

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