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18歳の役と言っても、当時すでに飛鳥ひろみは20歳をいくつか超えていたはずだが、清純派アイドルのようなルックスで、当時の嫁さんにしたいタレント・ナンバーワンだった竹下景子をさらにグラマーにした感じ。ピンクの乳首の眩しさは今なお鮮明に覚えている。
その後も一平は、ロマンポルノの清純派スターとなった飛鳥ひろみ見たさに、もぎりのオバサンの冷たい目にさらされながら幾度となく映画館に足を運んだ。
当時、飛鳥ひろみ主演のポルノ映画は年間10本近いペースで撮られていたから、さすがに全作見るのは無理だったが、それでも一平は、ひろみの映画からいろんなものを学んだ。
ロマンポルノは基本的に3本立て上映で2週間で番組が変わること。大作(?)の場合は2本立てで、映画によっては1ヶ月のロングラン(?)上映が行われること。そして、映画で繰り広げられ性愛描写全般を食い入るように見入った。
いろんな作品を見るに連れ、一平のポルノを見る目は『欲情』から『観察』へと変わって行った。
この角度のひろみさんの表情はあまりキレイじゃないとか、男優のあえぎ声が大き過ぎて気になるとか、このシチュエーションでいきなり後背位でつながるのは不自然とかとか…
童貞のクセに、ついつい不満な点ばかりが目に付いてしまったが、それも飛鳥ひろみにいい作品に出てもらいたい一心から。いつしか一平の目は、セックスシーンよりもむしろドラマの部分に注目するようになっていた。
『ドラマの部分をないがしろにするポルノは駄作だ』
一平には、そんなポルノ哲学が確立され、飛鳥ひろみのためにシナリオを書き下ろしさえした。
当時の一平は、ポルノ映画館の暗がりの中で、映画を、そして人生を学んだのであった。

その飛鳥ひろみも30歳を目前にする年齢となり、仕事量は減り、主演作もめったに上映されなくなっていたが、それでも一平からすれば何度もマスターベーションに使わせてもらった女神と呼んでもいい存在だった。
(もしかしたら、ひろみさんのおっぱいが見られたりするのだろうか…)
受話器を持つ一平の手が小刻みに震えた。

『と、言うことで話は決まったな。明日からこっちに来い』
あまりのことにボーッとしていた一平の耳に村田の声が再び聞こえて来た。
「えっ?明日?…いくらなんでもそれは…」
『ハア?なに眠たいこと言ってんだ?急な欠員が出たから、お前に声を掛けたんじゃないか。明日から来られないと意味ないぞ』
「でもですねえ、うちの会社は退職する場合、最低でも1ヶ月前に意思表示をするとの規約が…」
『はあ?わかったよ!もういい!他を当たるから聞かなかったことにしてくれ!』
村田が電話を切りそうな気配に一平は焦った。ここを逃したら二度と映画界に身を投じるチャンスはない。
「ちょっと待ったー!」
『…』
「わ、わかりました!すぐに行きます!でも…なんとか…1日だけ待ってもらえないでしょうか?」
切羽つまった一平の請願に村田も折れてくれた。
『しょうがないなあ。じゃあ明後日だ。明後日の9時に調布の撮影所に来い。守衛のオヤジにオレの名前を言えば、わかるようにしとくから』
「あ、はい。承知しました。ありがとうございます!」

再び受話器を握ったままお辞儀してから電話を切った一平は、自分の膝がいまだに震え続けていることに気が付いた。
新たな世界に挑む武者震いか、いきなり上司に退職を願わなければならない戦慄か。たぶん両方なのだろう。
だが、すでにサイは振られたのだ。夢にまで見た映画の仕事。明日は土下座してでも退職を願い出るしかない。
一平は興奮と不安で、眠れぬ夜を過ごしたが、やはり希望の方が大きかった。

明け方、うとうとしながら夢を見た。
飛鳥ひろみが妖艶な笑顔を浮かべながら着ている服を一枚づつ脱いで行く。そして一平に向かって言った。
『こんな感じでいいですか?監督』
(つづく)

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2011.09.23 Fri l 燃えろ一平!幻のデビュー編 l コメント (0) l top

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