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マコト君が上京してきたのは、ソメイヨシノが東京中をピンクに染める4月1日。
『今日はエイプリルフールだわ。冗談だったらいいのに…』
往生際の悪い詩織さんのもとに、これまた緊張した表情のマコト君がやってきました。
でも、礼儀正しく挨拶されたマコト君の表情を見て、それまでの先入観がすっと消えていくのを感じた詩織さん。夫よりずっと痩せてスマートでしたが、昌明さんとよく似た顔立ち。いや、昌明さんよりむしろ息子の翔の面影とそっくりで、詩織さんが思わず微笑んでしまったほど。前に会ったのが、翔が生まれてすぐの時だったので、そこまでは気付かなかった。そう言えば、夫も『なんだかマコトの小さい頃に似てるんだよな』とか言ってましたっけ。
驚いたのは、普段は人見知りをする翔が、マコト君と顔を合わせたとたんに、もじもじした笑顔を向けたことでした。もしかしたら『こやつ、僕の一族だな!』と本能的に感じたのかもしれません。
とにかく詩織さんは、夫が出勤中に義弟を出迎える緊張が、スーッと消えていくのを感じていたのでした。
こうして詩織さん一家とマコト君の同居がスタートしました。

二年ぶりに見るマコト君は、詩織さんの目から見てもそれなりに大人になり、男っぽさすら感じられるように成長していました。
でも、根が素直なのでしょう、詩織さんと目が合うと、はにかんで慌てて視線をそらすような初心っぽさは相変わらずで、今回はそんなところにも好感が持てたりします。
『やっぱり先入観をもってはダメ!』
詩織さんは反省しました。人生、すべからく勉強なのです。

上京当日、マコト君は自分に用意された二階の部屋の片付けに時間を費やし、詩織さんは夜の食事の準備に追われ、翔は一階と二階を興奮気味に行ったり来たりしています。
そして、一家の主人の昌明さんが帰宅するのを待って、ささやかな歓迎会を始めたのでした。
「マコト、仲良くやっていこうな」
兄にビールを注がれながら、でもマコト君は詩織さんの方を向いて、
「うん…お姉さん、ご迷惑をかけますが、1年間よろしくお願いします」
と、あらためて丁寧な礼をしたのでした。
「そんなに堅苦しくしないで。自分の家だと思ってくつろいでくれればいいの」
「はい」
慣れないビールを一口飲んだだけで真っ赤になったマコト君を、詩織さんは微笑ましく眺めていました。
マコト君は詩織さんのことを『お姉さん』と呼んだけれど、3人姉妹の末っ子で育った詩織さんには、それがまた新鮮で心地よかったりする。
『なんとか、うまくやって行けそうだわ。まさに案ずるより産むが易し』

3歳になる翔は、さっそくマコト君のファンになったようです。
いきなり年の離れたお兄ちゃんが出来た興奮に、しょっちゅうマコト君にまとわりついていたけれど、それを嫌がりもせず、絵本を読んで聞かせたり、仮面ライダーごっこの怪人役を演じたりの大活躍。翔クンはもう大喜び。ママやパパの怪人役では、イマイチリアリティに欠けていたようです。
入学式までの数日間、マコト君は庭やバスルームやトイレの掃除まで買って出てくれました。
「いいのよ、そんなことまでしなくったって。東京見物にでも行ってくれば?」
「いえ、実家でもよくやってましたから」
初めだけ点数稼ぎをしてるのかしらと、疑っていた詩織さんでしたが、マコト君の意外な手際のよさと、詩織に接する態度から見て、『この子はホントに誠実なのだわ。裏表の無い素直な子』と評価せざるを得ませんでした。
マコト君は、スーパーの買い物にまで詩織さんに付き合ってくれました。
3歳児を連れての買い物は結構大変なものだけど、マコト君が翔を見てくれるおかげで、詩織さんは久しぶりにゆっくりとお買い物に集中することが出来ます。
翔のあしらい方は、父親の昌明さんより上手いぐらいで、これもマコト君の純真さを、翔が直感的に感じるのかもしれないと詩織さんは思いました。
やがて、マコト君の大学の入学式。オリエンテーリングなど、俄然忙しくなったマコト君でしたが、相変わらず夜には翔の遊び相手となり、土日には家事や買い物の手伝いを甲斐甲斐しくやってくれます。
(つづく)

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2011.11.02 Wed l My Lovely Little Brother l コメント (2) l top

コメント

やっぱり
なんだかマコト君は着々と詩織さんの関心をかってますな。さてはてこれからが楽しみだわ(^^)。
2011.11.02 Wed l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
まさしく『案ずるより産むが易し』
いい感じになってきました^^
2011.11.03 Thu l スマイルジャック. URL l 編集

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